Profile Harada Naoya

      原田尚也
 1952年生まれ 旭川出身
 1978年 神奈川歯科大学卒 東日本学園大口腔外科助手
 1985 現在地にて開業・北海道医療大学口腔外科非常勤講師
 1993年 歯学博士
  1999年 北海道医療大学臨床講師 北海道歯科医師会学術委員
 2006年 北海道医療大学臨床教授 札幌歯科医師会理事

 所属学会〜日本口腔外科学会 日本口腔科学会 日本糖尿病学会 
        日本歯科放射線学会(認定医)

      得意分野 口腔外科
          趣味 テニス


朝日新聞 受動喫煙に関する投稿記事

2017.04.21金曜日 朝日新聞朝刊  「声」欄に掲載されました
.

 

「受動喫煙、歯の健康も脅かす」歯科医 原田尚也(札幌市 65歳)

 

公共の場での屋内全面禁煙を、と訴える社説「たばこ対策 五輪にともる黄信号」(17日)に同感である。

私は歯科開業医だが、40年近く臨床を経験するなか、喫煙はもちろん受動喫煙が、口の中の健康に悪影響を及ぼす症例を多く見てきた。

 

歯茎が黒くなっている小児患者は、親がヘビースモーカーという例が多い。

副流煙に含まれるタールが沈着している可能性が強いと思われる。

以前、真面目に治療に通ってくるのになかなか歯周病が改善せず、

歯茎が黒い非喫煙の患者がおり、よく聞くと職場の同僚のほとんどが喫煙者だった、という例にも出合った。

 

ニコチンは血管を収縮させ末梢血液の循環量を減らし、細胞の新陳代謝を妨げることから歯周病を進行させる。

喫煙者だけでなく、受動喫煙でも歯周病のリスクが高まることは、国立がん研究センターの疫学研究で明らかになっている。

全身の健康状態に悪影響を及ぼすことは疑いの余地がない。

 

国民の健康寿命を延ばしたいと考えるのであれば、禁煙のきっかけとして「たばこのない五輪」は良い機会になると思う。

ぜひ「屋内全面禁煙」を目指して欲しい。

 


朝日新聞 札幌市立病院 歯科医師による違法診療問題に関する投稿記事

発行日 =2002年01月26日  ソース =朝刊
面 名 =オピニオン2  ページ =014
発行社 =東京  文字数 =443

歯科医の救命、道を閉ざすな(声)

 歯科医 原田尚也(札幌市 50歳)

 札幌の歯科医師3人が、救急センターで研修中に、専門外の医療行為をした疑いで書類送検されました。これは我々歯科医師から高度医療研修の機会を奪うことにつながりかねないため、残念に思います。

 高齢社会となった今、全身の機能が低下した患者さんを診察することは日常的です。歯科診療中に心筋梗塞(こうそく)や脳血管障害を起こすことは十分考えられます。適切な対応ができずに、歯しか治せませんというばかりでは、患者さんを死に至らしめる結果になります。

 今回の事件では、経験豊富な指導医のもと、志願して研修を受けていたのであり、意欲のある優秀な歯科医師が増えるならば救命率も上がるのではないでしょうか。医療の現場というものは、法律で線をひけるほど単純なものではありません。「歯科に属さない疾患」というあいまいな基準で救命の道が閉ざされることには反対です。

 救急救命のトレーニングの場が奪われれば歯科医療の質も低下し、結局被害者になるのは国民ということになるでしょう。


加山雄三記念館にて

パークゴルフ新聞連載

「愛、編むDentist」@

読者のみなさまこんにちは!今回から拙文を書かせていただきますが,人間は「ビタミン愛」が不足してくると病気がちになるような気がします.堅い歯科のお話にちょっぴり込められた「やわらかな愛情」を吸収していただくことで,健康になってくれれば幸いです!

 

「歯の常識は非常識?! 〜硬いものを咬めばいいってもんじゃない〜」

「最近の若い人は硬いものを咬まなくなったからアゴが弱くなったんでないかい?ほら,私のように「鮭とば」や「かんかい」をバリバリ咬んでいるとアゴが鍛えられて歯が丈夫になるんだよ!」とおっしゃるそこの人,ちょっと待ったぁ!

 確かに「硬い食べ物」を咬むとその刺激によってアゴの骨を作る「骨細胞」は増えます.

でもこれは成長期の話.人間の骨格が完成するのはおおよそ1820歳前後ですから(女性の方が少し早く成長が止まる).そのあとはいくら硬いものを咬んでも部分的に少し骨が増えるだけで,あとは日々骨細胞の新陳代謝(古くなった細胞が新しい細胞に置き換わること)が繰り返されるだけの話です.その新陳代謝の力は年齢とともに減少しますから,歯を支える骨もやはり年齢と共に減少します.

 よく中高年の方が「最近身長が低くなった,,」と言っているのを耳にしたことはありませんか?クルマでも悪路をガタガタ走っていると足回りがヘタってくるでしょ?あれと同じことが歯の回りにも起きるわけです.クルマならショックアブソーバやタイヤを交換すれば良いのですが,歯は「交換」というわけにはいかず,「抜歯」という処置がまっているだけです.

 ですから35歳も過ぎたら歯に過剰な負担をかけぬよう,舗装道路を静かに走るクルマのように歯をいたわりながら,適度な硬さのメニューを選びつつおいしいお食事を楽しんでくださいネ。

 次回は咬むことと脳の関係についてデス.

 

〜以上10月号原稿〜

「愛、編むDentist」A

前回は「硬いものの咬みすぎは良くない」という内容でしたが,今月は「しっかり咬んでいると脳は活性化しますよ!」というお話です。

「咬まないと認知症になる?! 〜咬むことは元気のもとです〜」

 最近の研究では「咬めば脳も活性化する」ということがわかってきています。東京医科歯科大学の下山和弘先生は,高齢者の口腔の健康状態と心身の状態の関連について調査したところ「残っている歯が少ないとうつや神経症の傾向が出やすく,義歯が合わないこともうつに関与する」と言うことがわかったそうです。また,東北大学の渡辺 誠先生も「歯が少ないほど脳にある海馬(かいば・新しい記憶をしまっておくところ)の容積が小さくなる」という論文を発表しております。ちょっと難しくなりましたが,要するに「咬めない人の脳は活性化しない」ということであり,逆に言うと「咬めている人の脳は活性化する」ということがおわかりいただけるかと思います。

 そこで,咬むためにはなんと言っても「健康な自分の歯」が一番!これを一生涯保つことができるのならあなたの未来は明るい!と言えるでしょう.でも,なんらかの理由で歯が無くなっているところがあるのなら,ブリッジや入れ歯,インプラントなど,どのような方法でもよろしいですから補っておいて下さい。

 「部分的に歯がない」ということは,「残っている大切な歯がその分も働かなければいけない」ということになりますから,「咬む力」が変な方向に加わったり,過重な負担がかかったりしますので,歯並びやかみ合わせのバランスも悪くなります。

 ぜひ,しっかりしたかみ合わせを保ち,脳を活性化させましょう!(でも咬み過ぎはダメです)もしかしたらパークゴルフの「コース戦略法」が変わるかもしれませんヨ。

 次回はパークゴルフと歯のお話デス。

  

〜以上11月号原稿〜

「愛、編むDentist」B

さて、いよいよ今回は歯のかみ合わせがどのようにパークゴルフに影響するのだろう?というお話です。

「おまちかね!〜パークゴルフと歯の話〜」

  パークゴルフは「ボールをよく見て芯で打つ!」ことが重要ですね。軸のしっかりした人のフォームは見ていても美しく感じられますが、この「美しさ」は頭の固定からくるものです。人間が物を見るときに頭が動いていては正しく見ることができません。スイングの途中で全身が前後左右に動けば当然目の位置もズレますから、打つ瞬間にも目が動いており「ダフったぁ〜!」となるワケです。(身に覚え、あります?)モーグルの上村愛子選手の滑りを思い浮かべてください。足は激しく上下していても、比較的頭は安定していますよね?このようにスポーツパフォーマンスの高い選手の頭は安定している、ということが言えると思います。

 ところが、人間の頭はもともと自由に動くようになっているため「頭の固定」というのは意外に難しく、固定するためには「首を支える筋肉」がしっかりしていなければなりません。でも幸いなことに物を咬むときの「アゴの筋肉」は「首を支える筋肉」と重なり合っているところもあり、歯をくいしばることによって「頭が固定される」ということになるんですね〜! 試しに歯を食いしばったまま首の運動をしてみてください。ほら、動きづらいでしょ?

 このことからナイスショットを打つためには、「首を支える筋肉」と「アゴの筋肉」を働かせることが大切であり、そのためにも上下の歯でしっかりした咬みあわせを作ることが重要、ということが言えると思います。

 プロゴルファーの青木 功さんも「歯の具合が悪くて咬みあわせの良くない時はスコアも良くない」と言っております。普段から歯に気配りをしていると、スコアアップするかもしれません!

 次回は「咬むための元気な歯」を保つには?というお話デス。

 

〜以上12月号原稿〜

「愛、編むDentist」C

 

みなさま、あけましておめでとうございます!今年も「硬い歯にこめられた柔らかな愛情」をお伝えしたいと思います。寒い時期ですが、冬にトレーニングをしておくと夏場のスポーツ成績が良くなりますから、できるだけ身体を動かしましょう!

「おーいドラえもん! 〜どこでも歯みがきぃ〜」

さて、前回までで「咬むことの重要性」はご理解いただけたことと思います。そして咬むためには「元気な歯」が必要になりますね?今回は良い歯を保つためのお話をしたいと思います。突然ですが問題です!歯を失う主な原因はなんでしょう?それは「虫歯」と「歯周病」がほとんどを占めています。いずれも「細菌感染症」ですからお口の中に「悪い細菌」が居座らないようにすれば良いワケです。

「悪い細菌」を取り除くにはどうすれば良いか?これは誰が何と言おうと「歯みがき」につきます。歯みがきは文字通り「歯」を「磨く」ことです。悪い細菌は「歯」にくっつきますから「歯グキ」を磨いても細菌の住みかである「歯垢」は取れません!残念!

この歯垢を取り除くのが歯ブラシ。単なる消耗品にすぎませんから「どこにでも」置いておくことで時間や場所に左右されず、自由に歯みがきをすることができます。「どこでもドァ〜」とはちょっと意味が違いますけど「どこにでも置いて」「どこででも歯みがきをする」という意味での「どこでも歯みがきぃ〜」をお勧めします。歯ブラシをお風呂場に置いて湯船に「浸かりながら」歯みがき、あるいは職場に置いてお昼休みに新聞を「見ながら」歯みがき、といった「ながら」磨きのコツを会得すればもうこちらのもの!そのためには歯みがきペーストを使わず、歯ブラシだけの「カラみがき」ができることがベストですね。唾液は普段から飲み込んでいるわけですから、いまさら「不潔!」だなんて嫌わないでください。いやならティシュペーパーでぬぐいながら磨けばよいのです。

 だけど「歯は磨いてるつもりなんだけど歯垢がついてねェ〜」というあなた!心配ありません、定期的に歯科医院で歯のクリーニングをしてもらってはいかがですか?エステに行くような感覚で歯科医院へ行く時代が来ています。

お屠蘇を呑んだあとは軽く歯みがき!これで良い初夢が見られること間違いなしです!

次回は「喫煙はお口の健康に良くないゾ!」というお話デス。

 

 

〜以上’06年新年号原稿〜

「愛、編むDentist」D

 

前回はどんな場所でも歯みがきができるといいですね、というお話をしましたが、今回はたとえ歯をみがいていても「タバコ」を吸ったら「元の木阿弥」というお話です。

「喫煙は歯周病の誘因だ! 〜ニコチンは歯グキの循環不全を起こす〜」

 みなさまの中には「いやぁ〜、仕事の後の一服はウマいねぇ〜!」というかたがいらっしゃることと思います。その気持ち、わからないでもないのですが喫煙は肺ガンをはじめ、心筋梗塞や脳卒中などの生活習慣病を引き起こすとされています。現在では「ニコチン依存症」という立派な病名が付けられ、禁煙治療を受けたいと思う人には今年の4月から健康保険も適用される予定なのですゾ!

では今回のタイトルに戻りますが、なぜ喫煙によって歯周病が進むのかと言いますと、タバコに含まれているニコチンには「血管を縮める作用」があるので歯グキへ流れる血液の量が不足します。そうなると歯グキの新陳代謝がスムーズに行われなくなりますから、健康な歯グキを作るための「新しい細胞」が補給されにくくなるので歯周病が進行する、というワケです。これ以外にも喫煙は「口臭の原因」になることがありますし「味覚が鈍くなる」あるいは歯グキや舌などにできる悪性腫瘍の「口腔ガン」の原因になることさえあります。

また家族など身近にいる人たちはフィルターを通さない「副流煙」(こちらの方が有害と言われています!)を吸わされるため、より被害をこうむります。さらに小さいお子さんでタバコを吸うわけがないのに「歯グキが黒いんだけど?」という子どもを見かけたら、親の吸うタバコの煙を吸い込むことによって「黒くなっている」とも考えられます。

 喫煙習慣は「百害あって一利なし」と言われます。以上のように、お口の健康に良くないのはもちろんのこと、全身の健康にも良くありません。お口の健康を保つため、そして大切なご家族の健康を守るためにもタバコは吸わないほうが良いですね!

次回は「歯周病は心臓疾患の誘因になる!」というお話デス。

 

 

〜以上’062月号原稿〜

「愛、編むDentist」E

 

 さて、前回のお話を読まれて「タバコをやめ、歯周病が改善した」という方がいらしたらうれしいです。ところでその歯周病、じつはちょっとアブナイ疾患なのです。

   「歯周病は心臓疾患の誘因になる?! 〜心臓の動脈に歯周病菌が入る〜」

私たち歯科医師は、みなさまに嫌われながらもなぜ歯周病を改善させるべく「ああだ、こうだ!」と口うるさく指導を繰り返すのか?それは歯周病に関する様々なことが明らかになりつつあるからで、知れば知るほど「ああだ、こうだ!」と言いたくなるのデス!その「明らかになった」ことをひとつ紹介いたしましょう。

それは「心筋梗塞を起こした血管に詰まっている粥状物を調べたら、歯周病菌が検出された」という事実なんです。こわいですね〜!この研究は、東京歯科大学・微生物学教授の奥田克爾先生と大和成和病院心臓病センター長・南淵明宏先生との共同研究で明らかになりました。簡単に説明しますと「歯周病菌」は

・「出血するような傷んだ歯グキ」を貫通して「血液中」に入る。

・入った細菌は「異物」なので「血小板」や「白血球」が集まってきて凝集物を作る。ほら映画「ミクロの決死圏」で逃げようとした博士が白血球などの「抗体」に取り付かれ吸収されてゆくシーンを覚えてますか?

・この「凝集物」がつもりつもって心臓の動脈内に「おかゆ」のようなモノを形成し、動脈が詰まる、という恐ろしい病気の原因になるということです!

ちょっと暗いモードに入ってしまいましたが、このような歯周病菌を含んだ「歯垢」も初期の頃は歯ブラシでとれますから「ガンコな歯周病菌」にならないウチに取り除きましょう。早め早めのお手当を!歯を磨いて歯垢が付かないようにすることは結果的に「心臓病の予防」、ひいては全身の健康維持に役立つことにもなる、ということで私達は「口うるさく」ご指導申し上げているのでござるよ!

次回は「骨折を防ぐには納豆を食べよう!」というお話デス。

 

 

〜以上’063月号原稿〜

「愛、編むDentist」F

 

さて、前回は「歯周病菌」と「心臓病」の意外な関係のお話をしましたが今回は食べ物のお話をしましょう。

「納豆を食べて骨折を防ごう!その1〜大腿骨骨折は寝たきりの誘因〜」

そろそろアウトドアシーズンですね。読者のみなさまの多くは元気にスポーツを楽しんでいることでしょう。でもささいなことで骨折することがありますよね? 私の先輩である神奈川歯科大学・放射線学教授の鹿島勇先生の著書によると「高齢で骨折,特に大腿骨を骨折し,寝たきりになると5年以内に70%のかたが亡くなる」という少しコワイことが書いてあります。これは寝たきりになり生活スタイルが一変することによる影響と考えられます。

若い人の骨は血液が多く「しなり」のある構造をしていますけど、高齢になると骨を作り替える能力が低下するため、弾力性のない「単に硬いだけ」の骨になってしまうので折れやすくなるというワケです。

ではその「しなり」のある骨を作るにはどうすればよいか?答えは ズバリ,納豆を食べること!であります。納豆にはビタミンK2というものが含まれています。このビタミンK2は、骨を作っている大事な要素のひとつであるコラーゲン(これは「にかわ」のようなもので「しなり」のある骨をつくるために必要な成分)に作用して,カルシウムをくっつきやすく丈夫にする働きがあるのです!

では納豆を食べた人は本当に骨折しにくくなるのでしょうか?興味あるデータをご紹介しましょう。人口 大腿骨頸部骨折の相対発生率を調べた結果ですが、これによると全国平均を1とした場合、大阪、兵庫、京都はそれをうわまわる1.10以上の発生率がありました。しかしその一方で、東北・北海道は全国平均より低い1~0.89の発生率であるという結果が出てきたわけです。つまり東北・北海道の人は大腿骨頸部骨折を起こしにくい、という事実が判明したわけです。これはなぜか?いろいろ調べて行くうちに、どうも納豆の消費量と骨折には関係があるらしいということがわかってきました!

おっと残念!ここで紙面のスペースがなくなりました。続きは来月号に!

 

 

〜以上’064月号原稿〜

「愛、編むDentist」G

 

さて、今月はいよいよ納豆と骨折の関係が明らかになります!納豆を食べる地方には「大腿骨頸部骨折」が少ないという事実、ご紹介致しましょう。

「納豆を食べて骨折を防ごう!その2〜大腿骨骨折は寝たきりの誘因〜」

前回までで「大阪、兵庫、京都は全国平均より高い1.10以上の大腿骨頸部骨折の相対発生率があり、その一方で、東北・北海道は全国平均より低い1~0.89の骨折発生率でした」ということがわかったワケです。

さらに大阪、兵庫、京都の人たちが月々いったいどのくらい「納豆」を買っているかを調べたところ、この地方では一ヶ月あたり1,000円から2,000円のあいだしか納豆を買っていないことがわかりました。かたや北海道は3,000円から5,000円。東北地方にいたっては5,000円から7,000円も毎月納豆を買っていることがわかったのです!

ということは、納豆を食べることによってビタミンK2が摂取されますから、骨の構造を補強するカルシウムなどと結合して「高い骨密度」の獲得に関与していることが想像されます。さらに納豆の骨密度に対する効果は豆腐、牛乳、チーズなどよりも高いということもわかっていますから、「納豆を食べる人は骨が丈夫になる」→「大腿骨頸部骨折が発生しにくくなる」→「寝たきりになりづらい」→「健康で長生きできる」という素晴らしい結論になるではありませんか!

先月・今月と続いた内容は納豆協会(?) からの「回し者」のような文章になってしまいましたが、みなさまが健康で日常を過ごすためには「どんな食品をどう食べるのか? ということがいかに重要かを考えていただきたい、という気持ちをこめて書かせていただきました。とどのつまりはちゃんと咬める歯やアゴを大事にしましょう、ということになりますね!*ワーファリンなどの抗凝固薬を服用されている方は納豆を控えましょう。詳しいことは担当の先生にご相談下さい)

次回は「歯は折れる、割れる」というお話デス。

 

 

〜以上’065月号原稿〜

 

「愛、編むDentist」H

 

前回は骨折のお話でしたが、あの硬い歯に意外なことが起きるというお話をしましょう。

〜歯は「折れる」し「割れる」のだ!

歯が「折れる」と言うと、普通は「ぶつけて折れるのかな?」と思うでしょう。ところが今回の話はそうじゃなくて、治療したはずの歯が折れてしまう、というお話をします。

みなさんが歯の治療を終えたとしますね?特に「歯の神経を取って治療を終えた」あとに起こりやすいことなのですが、10年くらい経過したある日「物を咬んでいると痛い」「歯がぐらぐらする」「歯グキが腫れてきた」などの症状がでてくることがあります。「おかしいな?治療したはずなのに」ということで歯医者さんに行くと、「歯が折れています」あるいは「割れてますよ」ということを言われビックリすることがあるんですねぇ。

これはなぜか?神経を取った歯というものは「血液やリンパの流れ」がなくなった状態で、簡単に言うと「枯れ木の状態になった」ということが言えます。歯の内部には血管や神経が張り巡らされており、これをとってしまうワケですから歯の持つ「柔軟性」が失われてしまいます。歯は消しゴムとまでは行きませんが、「たわむ」性質があることをご理解下さい。あの丈夫な牛の歯でさえも、「たわむ」ことによって根本がすり減ったように欠けることがあるのですゾ!

このように柔軟性を失った歯は徐々に「硬いだけ」の歯になりますから、普通に咬んだだけで欠けることがあったり、あるいは治療に必要な「土台」などを歯に入れたりした場合はそれが「くさび」の役目をはたしてしまい、歯が割れてしまう、ということさえあります。土台の材質も金属からプラスチックまでいろいろ研究されておりますが、歯になじみながら同じような弾力でたわむ、という材料の開発はなかなかむずかしいようです。

割れた歯はほとんどの場合元へ戻すことはできませんから、歯の神経を取るはめにならないよう、普段から虫歯予防に気を付け、硬い物を咬みすぎないようにして下さいね!

次回は「歯は削っちゃイケナイの!?」というお話デス。  

 

 

〜以上’066月号原稿〜 

「愛、編むDentist」I

 

歯の治療をしたとしても歯が折れることがありますよ、という先月号のお話。でも歯を削らなくちゃいけない症例はた〜くさんあります。そこで今回は

「その歯、削ってはイケナイ!〜ミニマルインターベンション(MI)って何だ?〜」

 みなさまが歯医者さんに行き「虫歯ですねぇ〜」と診断され、ついには歯を削らなければならなくなる….。とほほの瞬間ですよね?でも最近の歯科医学では「あまり歯を削らないで治療する」という考え方が広がりつつあるということをご存じでしょうか?

それはミニマルインターベンション(minimal intervention)という概念なのですが、直訳すれば「最小限の介入」、つまり歯科の分野では「虫歯を削る時になるべく健康な歯の部分を残して治療する」という意味で使われます。

歯の病気は、内科の病気などとはちがって(自然治癒する歯の病気もありますが)虫歯などで削った歯は元には戻りません。そう考えると歯の治療って「引き算」なのかもしれませんね。ですからなるべく歯を残すように治療するわけですが、このMIは、一見簡単そうでもかなり気をつかう難しいレベルの治療になることもあります。例えば「ムシ歯で歯が痛い!」のなら歯の神経を取れば「痛み」は消えます。しかし歯は死んでしまいますね?そこで歯の悪いところだけを選択的に注意深く取り除き、経過を診てゆくと歯は死なずに治ることもあります。ですが、こういった治療には時間がかかるのと、期待どおりに治らない場合もあるため、患者さんの理解と協力が必要になってきます。でも、歯のことを考えればなるべく神経を残した方がより健康が保てると考えられます。

このように歯医者さんは「なるべく削らないように」努力をしているワケですから、患者さんもムシ歯にならないように歯を磨いたり、定期的に検査を受けるべき歯を自分自身で理解しておくことなどが大事になります。われわれは一生懸命治療しますから、みなさまも一生使う大事な歯の治療には根気よくおつき合い下さいね!

次回は「歯医者さんを上手に利用するには?」というお話デス。

 

〜以上’067月号原稿〜

 

「愛、編むDentist」J

 

なるべく歯を削らない、という考え方を実践するには患者さんの理解や協力も必要ですね、という先月のお話でしたがそこで、

〜「歯医者さんを上手に利用するには?」〜

みなさまは歯医者さんをどのようなときに訪れますか?「歯が痛くなってから行くに決まっているじゃないか!」と怒らないでくださいね〜(^_^;)  でも、おおよそ痛みが出はじめて歯医者さんに行くころには病状は進んでいると言えます。

歯科疾患の多くは初期には無症状ということがあり、これが発見の遅れにつながっているワケです。したがって普段から気楽に受診できる歯医者さんを見つけておき、定期的なチェックを受けることができるのなら一安心!磨きにくい歯のクリーニングをしてもらったり、個人個人に合わせた手入れの仕方を歯科衛生士さんから教わることもできます。私たちが治療方針を決める時にも、最初から「歯を抜く」とか「削る」などと決めつけずに「弱った歯でもキチンと経過を診てゆけば少しは長く使えるかも知れないなぁ」などと考えておりますから、痛みがなくても歯医者さんに行くということは上手な利用法といえるかも知れません。聞くところによると、日ハムの新庄剛志選手はオフには歯の定期的なメインテナンスを受けているそうですし(残念ながら今シーズンでユニフォームを脱ぐそうですねぇ)スポーツ選手の中には運動能力を維持してゆくための大事なチェック項目として「歯の健康診断を定期的に行う」ということを取り入れている人が多いようです。

このように、医療施設は「病気になってから行くところ」ではなく、「病気になる前に定期的なチェックを受けに行くところ」という考え方もあり、だと思います。みなさまも歯が痛くなる前に定期的なチェックを受けてはいかがでしょう?逆にその方が医療費全体のコストが下がること「間違いない!」と思いますよ!

次回は「電動歯ブラシってどうなの?」というお話です。

 

〜以上’068月号原稿  

「愛、編むDentist」K

歯医者さんを上手に利用して医療費をお安く、というお話の次は若干お値段の張る電動歯ブラシのお話です。

「電動歯ブラシってどうなの?」〜その利点・欠点について〜

最近では歯を磨くとき電動歯ブラシを使う方が多くなっています。歯垢がよく落ちるということで売れているようですが、初期の電動歯ブラシは手が不自由な方に対して開発された商品で、モーターによって毛先が上下にあるいは回転運動をする構造でした。最近では音波歯ブラシ(ヘッドにリニアモータが搭載され高速振動で歯垢を落とす)や、超音波歯ブラシ(2Hz以上の超音波発生装置が搭載されている)という新しい商品が出ています。いずれにしても基本は電気製品なので、湯船につかりながら長い時間ゆっくり磨く、という方には適しません。また、ペースメーカーの誤作動を起こす可能性もあるため、かかりつけの医師と相談することも必要な場合があります。

これらの基本的なデザインは変わりませんが、手元が太く先が細い、バットの先の方を持って歯を磨いている感覚ですよね?これだと毛先が上手く回らない、細かいところに当たらないということに加えて、振動で疲れる、音がうるさい、などの欠点もあります。歯を磨かない人が興味を持たせるために使うのなら良いかも知れませんが、細かく歯を磨くためには弱点があると言わざるを得ません。でもこれらの点を改良すればかなり売れると思います!ここで歯を磨く時間を考えてみましょう。単純に歯一本につき30秒かけて磨くとします。そうすると大人の歯は28本ありますから、14分かかるのですよ!どうです?14分電動歯ブラシを当て続けられますか?腕が疲れそうですよね?

歯垢を落とす能力が高いから短時間でも大丈夫!ということもあるかもしれませんが、例えばみなさんがクルマを洗うときのことを思い浮かべて見てください。ドア回りなどは手洗いしないと汚れは落ちませんよね?同じように歯の細かいところは丁寧に歯ブラシを当てなければ歯垢は落ちない、ということがおわかりいただけたことと思います。でも、ぜ〜んぜん歯を磨かない人が、電動歯ブラシを使うことによって興味を惹かれ歯を磨く習慣がつく、ということなら大歓迎です!

次回は「口腔管理のプロ、歯科衛生士さん!」というお話デス。

 

 

〜以上’069月号原稿 

「愛、編むDentist」L

先月は「電動歯ブラシで自己管理」というお話でしたが今月は「プロに管理していただくことも大事です」というお話をしましょう。

「口腔管理のプロ、歯科衛生士さん〜マイ衛生士を見つけよう!〜」

「お口の健康管理は自分で行う」ということは基本ですが、自分の歯や歯ぐきの状態はなかなかわかりづらいものです。そこで「専門家の定期的なチェックを受けることでお口の健康を保つ」という考え方が出てきます。健康を保つためなのですから「他力本願」でもかまわないと思います。

定期的に歯科衛生士のチェックを受けていると「個人の長期的なデータ」が蓄積されますので、結果お口のなかでも「特に弱いところ」がはっきりしてきます。たとえば漠然と「歯ぐきから血がでるなぁ〜」と感じていたけれども歯科衛生士のチェックを受けていると「右下の奥から二番目の歯ぐきの状態が良くない」と言ったことが具体的にピンポイントでわかるようになってきます。そうなれば出血するところだけを入念に歯ブラシすればよいワケですし、チェックポイントがわかっていますから余計な処置をしなくても済むので時間と費用の節約にもなります。また定期的に診ていると「この患者さん、最近歯垢が多くなってきた。変だな?」と気づくことがあります。よく生活習慣を聞いてみると「部活でスポーツドリンクを飲むことが多くなり、疲れるのであまり歯みがきをしなくなった」ということがわかったとします。そこで生活指導を行えばそれだけで歯科疾患を未然に防ぐことができるワケです!

さらに「定期検診を受けよう!」と意識してこれを継続できる人は「口腔管理の重要性に気づいた人」とも言えますから、健康や人生に対する意識が変わるかも知れませんね!

このように歯科衛生士は患者さんごとのケアメニューを考え指導してくれる「心強い味方」であると同時に「歯ブラシ一本で人の人生を変える能力を持っている人」だと私は考えていますので、ぜひ「自分のことを知っている歯科衛生士」つまり「マイ衛生士」を見つけるようにしてくださいネ!

次回は「フッ素は虫歯予防の常識」というお話デス。

 

〜以上’0610月号原稿 

「愛、編むDentist」M

マイ衛生士を見つけたあとは、虫歯予防にかかせないフッ素のお話デス。

「フッ素は虫歯予防の常識〜子どもから大人まで使いましょう〜」

厚労省はフッ素の有効性を認めた上で、2003年に使用方法のガイドラインを発表しました。簡単に内容を説明しますと「歯科医師の指導(細かい使用方法は省きますが)のもとにフッ素洗口すれば虫歯予防に効果がありますよ」というもので、「今さら何を言ってるの?」と不思議に思う読者もいらっしゃるかと思います。でもね、みなさん、昔は虫歯に対するフッ素の有効性をめぐり、かなり激しい学会論争があったのですゾ! そんな時代を知っている私としては、やっと安心してフッ素が使えるなぁ〜、と感じる今日この頃です。

また、このガイドラインによりますと「フッ素で口をゆすぐ方法は、4歳から14歳までの実施が虫歯予防にもっとも効果がある」とされているほか、「ご高齢の方でも歯の根元にできる虫歯を予防できる」ということも記載されております。ですから子どもから大人まで使いましょう!ということになるのです。そこで先月もお話ししましたように、歯医者さんや歯科衛生士さんに「お口の健康を維持するための日常生活のコツ」を指導してもらいながらフッ素を応用すれば一安心、ということなのです。

フッ素についての説明も加えますが、ゆすぐ程度に薄められたフッ素であれば、飲み込んでも健康被害が発生することはありませんし、歯のフッ素症(歯の表面が白くなったり歯に凸凹ができたりする症状)は8ppm以上の飲料水を20年間以上飲み続けた場合に生じる症状であることから、上水道の発達した日本ではまず心配ありません。それでも「まだ心配だ」という方のために、フッ素はアレルギーの原因になることはなく、骨折、ガン、神経及び遺伝子系の疾患との関連は疫学調査によって否定されていることを申し添えておきます。

みなさま、安心してフッ素で「歯を磨く」「歯をゆすぐ」ことなどを、日常の生活習慣に加えてくださいネ!

次回は「歯磨きペーストは使わなくてもよい!?」というお話デス。

 

 

 

〜以上’0611月号原稿 

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